GCN文庫1周年記念『短い小説大賞』 GCN文庫1周年記念『短い小説大賞』

結果発表

※タイトル五十音順

コドクな彼女 北田龍一

選評

最初は、ミステリアスでどこか浮世離れしていたヒロインが、いろいろな面を見せることで実に魅力的に見えてくる、正に「このヒロイン実は……」というテーマにあった作品です。
作品が進むにつれて徐々に見えてくる、可愛かったり、微笑ましかったり、庇護欲をそそられたり、不気味で怖かったり、頼もしかったりするヒロイン。これだけの属性を抱えていながら、1人のヒロインとしてまとまっていて、非常に良いキャラクターでした。

また、この作品は「小説家になろう」の「短編」区分最大文字数である7万字に迫る文量を持つ作品でもあります。
途中で中弛みを起こしてもおかしくない文量ですが、本作は複数の物語のヤマがうまく配置されていて、飽きさせずに最後まで読み切らせる力を持った作品です。最後まで読んだ時の一冊の書籍を読み切ったような読了感は、著者の力量を感じさせるものでした。

一方で、ラストは少し駆け足で、著者の「まだ書き足りない」という思いを感じました。
短編としてもとても良い作品でしたが、長編の方が力を発揮できるかもしれない、という意味でも、ポテンシャルを秘めた作品だと思います。

婚約破棄のおかげで婚約者ができました デンセン

選評

婚約破棄から始まる本作。可愛い系ショタの見た目ながら、マイペースで腹黒な一面を持ち合わせた主人公の魅力と、そんな主人公が引き起こす、ざまぁ展開の爽快さに惹き込まれました。
外見は天使、中身は悪魔なショタ主人公は個性的で、読者に好かれる秀逸なキャラクター像が出来上がっているように思います。

そんな主人公が引き起こす婚約破棄を巡る騒動は、面白いの一言です。綿密な設定を冗長になりすぎないようにまとめ上げ、ざまぁシーンのカタルシスを生み出す展開からは著者の力量の高さが伺えます。
中でも主人公が、婚約破棄した王子達一行を口撃で追い詰めていく一連の流れは、まさに今の市場が求めている爽快さを感じられました。

序盤で出てきたイケメンが、最終的に主人公と婚約するヒロインだったというオチも、意外性があり良かったです。
ただ、ヒロインの可愛らしさなど、魅力の深掘りがしきれていない部分があるようにも感じました。
今後主人公とどのように関わっていくのか、その中でどのようなヒロイン像が出来上がっていくのか、話の広がり方にも期待できる、書籍化に向いた作品だと思います。

人生2周目の鏑木先輩 としぞう

選評

いきなり婚姻届を出して来たり、「好き」を通り越して「愛してる」や「大好き」と連呼する鏑木先輩に胸を打ち抜かれました。素直に可愛いと思いましたし、1周目で理解した趣味の話を出す等、夫婦時代の様子が会話に出てきたので、描かれていない1周目の妄想が膨らみました。

短編小説は短い文字数の中でどこまで“忘れられない”登場キャラクターを作るかが肝になってくると思います。
その点、鏑木先輩は分かりやすく振り回すキャラ。ただそれだけなら「ふーん」で終わるところを、二周目という特異な性質で上手く彩っているかなと思いました。

また、主人公がツッコミキャラで、そのツッコミを満足そうに受け止め溺愛っぷりを出してくる鏑木先輩というやり取りも「ラブコメを読んでるなぁ俺」としみじみ思わせて頂きました。

気になったところを上げるならば、タイトルを見ただけで、ヒロインがどんなヒロインかが一発で分かってしまうという惜しい点がありました。
タイトルにある「人生2周目」というワードをミスリードとして活用して、うまく読者心理を誘導できると、より印象深い作品になったかと思います。

1次選考通過

※タイトル五十音順

総評

GCノベルズ/GCN文庫編集部として初めての公募企画となりました「GCN文庫1周年記念 短い小説大賞」。

募集開始前は不安もありましたが(なにせ初めての試みでしたので)、フタを開けてみれば事前の予想を大きく超える1700件超ものご応募をいただくことができました。ご応募いただいた著者の皆様には改めてお礼申し上げます。

編集部員全員で応募作品をチェックいたしましたが、力作が多く選考にはかなり苦労しました。受賞作を決める編集部における選考会議でもかなり意見が割れましたが、全体の傾向としてはやはり短編らしい、読者の興味を惹く事件がいきなり起きる作品が強かったように思われます。息吐く暇なく最後まで読み切らせる作品、と言い換えても良いかもしれません。
一方で、全体に言えることでもありましたが、テーマである「このヒロイン実は……」の部分が少々弱かったようにも感じ、その点は少し残念に感じました。

今回、受賞作とは別に選考を突破した13作品のリストを公開しておりますが、正直なところどれが受賞となってもおかしくないぐらいに接戦だったと思います。よろしければこちらの作品たちもチェックしてくださいね。

最後となりましたが、今度はGCノベルズの10周年がいよいよ来年に迫っております。もしかしたらその時、また何かやる……かもしれません……ので、今後ともよろしくお願い致します!


GCノベルズ/GCN文庫編集部一同

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※選考の経過ならびに個別の作品評価等、内容によってはお答えできかねる場合があります。予めご了承くださいませ。

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